第7章 電線・ケーブル技術資料

許容電流

電線・ケーブルの短絡時許容電流

絶縁電線、電力ケーブルの許容電流は、ケーブルとその周囲の熱的条件で定まるものである。すなわち許容電流は、連続定常電流によってケーブル内に発生する損失熱量とケーブル表面から外部に放散される熱量とが、平衡に達しているとき、ケーブルの導体の温度がそのケーブルに定められている一定限度(許容最高温度)となるような電流値として計算されるものである。

ところが、短絡事故時では、短絡が継続する時間が非常に短いため、許容電流のような長時間の場合にくらべると、著しく様相が異なる。すなわち短絡継続時間は、普通秒単位以内のきわめて短いので短絡継続時間内では、電線またはケーブルの導体に発生した熱量は、導体部分から絶縁体に向って放射されるひまがなく、もっぱら導体内部に蓄積されるものと考えられる。もちろんこれらの熱は短絡が終了してから、除々に絶縁体を通じて外部に放散されるので、しばらくたてば導体温度は平常値に戻る。

このように導体に発生した熱が、全然ケーブルから外に放散されないで、全部導体を温度上昇させるために使われたと考えてみると、短絡許容電流を比較的容易に計算することができる。

わが国における短絡許容電流計算式は許容電流計算式と同じくJCS第168号によって定められております。

一般にゴム・プラスチックケーブルの短絡時許容電流 I は

短絡時許容電流計算図
Qc:導体の単位体積当たりの熱容量 (J/℃・cm3
T4:短絡または地絡前の導体、金属シースまたは遮へい層の温度 (℃)
T5:短絡または地絡時の導体、金属シースまたは遮へい層の許容温度 (℃)
r1:20℃における交流導体抵抗 (Ω/cm)
ts:短絡または地絡電流の持続時間 (s)
α:抵抗温度係数 (1/℃)

以上により、電線ケーブルの短絡時許容電流計算式(簡略式)を示すと次のとおりとなります。

電線ケーブルの短絡時許容電流計算式

絶縁体の種類 ケーブルの種類 T1
(℃)
T2
(℃)
計算式(A)
アルミ
ビニル VV、VE 60 120 ビニル、銅計算式(A) ビニル、アルミ計算式(A)
ポリエチレン EV、EE 75 140 ポリエチレン、銅計算式(A) ポリエチレン、アルミ計算式(A)
架橋ポリエチレン CV、CE 90 230 架橋ポリエチレン、銅計算式(A) 架橋ポリエチレン、アルミ計算式(A)
ブチルゴム BN、BV 80 230 プチルゴム、銅計算式(A) プチルゴム、アルミ計算式(A)
天然ゴム RN 60 150 天然ゴム、銅計算式(A) 天然ゴム、アルミ計算式(A)
EPゴム PN、PV 80 230 EPゴム、銅計算式(A) EPゴム、アルミ計算式(A)
  • 〔注〕 T1:短絡前の導体温度 T2:短絡時の最高許容温度 t:短絡継続時間(s) A:導体断面積(mm²)
  • 短絡時許容電流は以下のとおり。
  • ケーブルの種類に関係するだけ
  • 定格電圧に無関係
  • 線心数に無関係
  • 布設条件に無関係